前回に続き、野村総研が2015年11月に公表した「生活者1万人アンケート調査」による消費行動の変化についての調査レポートから、 ポイントと思われる事象に着目して、私見を交えた記事を以下に紹介します。

 消費者意識調査の推移をみると、"直面している不安や悩み"としては、「自分の健康」がトップです。 次いで、「親の健康」「自然災害」「配偶者・子供の健康」「税金、社会保険料の増加」「社会保障制度の破たん」等が上位に並んでいます。
意外に思うのは、「社会保障制度の破たん」を不安に思う比率が、前回調査に比べて減ってきていることです。 以前には、消えた年金だの、税と社会保障の一体改革だのと騒がれていたことからすると、この変化は注目されます。 これは、少子高齢化が社会問題として騒がれていたのが1997年~2000年頃だったという背景も関係していると考えられます。 つまり、今はもう慣れてしまったというか、それが前提の常識として定着して閉まったのかも知れません。 今日明日すぐに破たんするというものでもない訳で、 それよりむしろ東日本大震災等の自然災害への不安がクローズアップされていると考えれば良いのではないでしょうか。
人間は、常に目の前にある不安に焦点が当たる傾向があるということでしょう。

 ところで、社会保障制度改革の関連でよく耳にしたのが、「消費者は将来の社会保障が不安だからお金を持っていても使わない。」との説明 でした。従って、社会保障制度改革で不安が解消されたらお金を使い出すので消費が上向くだろうという説がありました。 お金を積極的に使わないのは将来の生活に備えたいからだというのは当然あると思われます。しかし、不安が解消したらお金を使うかというと、 そう単純には考えられない面も見られます。
調査では、不安を数多く上げる人の方が、家庭の収入の見通しが「悪くなる」と回答する傾向があったのです。 さらに家庭の収入が「悪化する」と予想する人ほど、不安が消費意欲にマイナスの影響を及ぼしていることが分かりました。 この不安を除去するのは、一般に困難と思われます。 収入がドラスティックに増える等の確たる見通しがない限りは、消費意欲は上向かないと判断すべきではないでしょうか。

 他の「不安」の中で、「老後の不安」を挙げる人がどの年代でも増えているのが直近調査の特徴です。 特に「老後が非常に心配である」という回答比率が、2009年の30%から2012年は39%に増え、特に30代から50代ではすべて40%を超える状況になっています。 不安が消費を抑制する顕著な例として、独身女性への調査結果が興味深い内容になっています。
独身女性の消費動向について言うと、一般に可処分所得が多く、また他者への発信力も高いため、市場のインフルエンサー(影響者)として 消費を先導するケースが多いのです。ところが、50代になると消費をしなくなるという結果が見られます。 なんと、50代の独身女性は、50代の既婚女性と比べると、お金を使わなくなる傾向が顕著なのです。 40代までは、例えば百貨店やエステの利用率も高く、ラグジュアリー消費のターゲットとして見るべき購買層なのですが、50代になると一転して、 その比率が圧倒的に下がっているのです。
結局、50代以降は「老後の不安」への対応として、資産運用サービスとか金融商品の紹介など、不安解消サービスのターゲット層に転向していくと いうことなのでしょう。