買ってはいけない1

 ちょうど20世紀末から21世紀初頭の頃に「買ってはいけない」というセンセーショナルなタイトルの単行本が大ヒットしたことを覚えている人も 少なくないと思います。確か、200万部という巨大な売上記録を残したと記憶しています。
しかし、記録的な売れ行きの半面で、著者たちの知識不足による間違い等が指摘されて、「買ってはいけないは買ってはいけない」という批判的な 単行本もヒットする等の盛り上がり様でした。その後も続編が出て、論争は10年以上の長期間にわたりましたが、流石に最近では騒がれなくなってきています。 版元の「週刊金曜日」は、商品の安全性に関する雑誌記事としての連載後に単行本化しての大ヒットだっただけに大きな収益を上げたわけです。 1999年の初版以来、2014年までにシリーズで全10冊が刊行されました。一方、批判書も他の出版各社から出ており、 同様に10数種の単行本が刊行されています。 「買ってはいけない」の内容は、社会で広く流通している食品、日用品、家電製品などの身近な商品を取り上げ、 それに含まれる食品添加物その他の化学物質などの毒性や危険性、家電製品の構造及び性能上の問題点などを誇張し、企業名と商品名を名指しして、 「買ってはいけない」として列挙していたことで話題になりました。
当然、中にはとんでもない迷惑を掛けられたというメーカーも相当にあった訳です。

 これは、一時期を代表する社会的なブームになった訳ですが、同時にこのような論争を経ることによって消費者もメーカーも製品作り及び その品質に対する取組姿勢が、成熟に向かう好材料になったことは間違いないでしょう。製品やサービスを購入する際の評価指標として、 「安心」「安全」が大きな位置を占めるようになったのです。

 平成27年3月に閣議決定された「消費者基本計画」では、第2章の冒頭において次のように述べています。
『消費者が支出する消費額の総額は、平成25年には経済全体(GDP)の約6割と大きなウエイトを占めている。 米国など7割に近いウエイトを占めている国もあり、日本でも豊かな消費生活を実現する中で増加する余地がある。
一方で、平成25年度には約94万件の消費生活相談が消費生活センター等に寄せられており、平成25年1年間の消費者被害・トラブル額 (消費者被害・トラブルに関する商品・サービス等への支出総額)は、「平成26年版消費者白書」によると、約6.0兆円との推計結果が得られている。 消費者と事業者との間で情報の質や量に格差がある中で、消費者に対して商品・サービスに関する正確な情報が提供されず、 安全な商品・サービスを消費者が安心して消費活動を営めなければ、選択した商品・サービスの効用に対する不安感から消費者が購入に慎重になってしまう。 もしそうなれば、消費の安定的な増加が進まず、持続的な経済成長に支障が生じるとともに、豊かな生活の実現も困難となる。』

 また、上記の同計画は進展するネット取引に関しては、次のように述べています。
『情報通信技術の発達と情報通信機器・サービスの急速な普及により、インターネット上で流通する情報量は飛躍的に増加している。 政府においても、世界最高水準のIT利活用社会を実現することを目指しており、デジタル技術における技術革新とグローバルな高度情報通信社会が 更に進展することが見込まれる。このような高度情報通信社会の進展等を背景として、インターネットで様々な商品・サービスの取引 (デジタルコンテンツの購入や金融取引等も含む。)が時間や場所にかかわらず可能となり、実際に多くの消費者がこうした利便性の高い インターネット経由の取引を行うようになっている。また、クレジットカードや電子マネーなど、決済手段も多様化している。 我が国のB to C(消費者向け)電子商取引の市場規模は、平成20年の6.1兆円から平成25年には11.2兆円となり、5年間で約1.8倍に増加している。 これに伴い、「電子商取引」に関する消費生活相談の件数は年々増加傾向にあり、平成25年度には消費生活相談件数全体の2割以上を占めるに至っている。 また、情報通信に関連する消費者トラブルは新しいものが次々と発生しており、内容も携帯電話や光回線など電気通信サービス契約に関するもの、 インターネット通販による商品の購入や多様化する決済手段に関するもの、アダルト情報サイトやオンラインゲーム等のコンテンツに関するもの、 迷惑メールや個人情報の不正入手に関するものなど、多岐にわたっている。
さらに、情報通信技術や機器の発達により膨大なデータが蓄積されるようになっている。 そのように蓄積されたデータの適切な利活用などによって新たなサービスが展開されることは、消費者の利益の増進に資する。
一方、個人情報の取扱いは漏えい等のリスクを伴い、また、個人情報やプライバシーという概念が広く認識され、消費者の意識が高まってきて いることを踏まえ、消費者の個人情報及びプライバシーの更なる保護が求められている。 このため、消費者政策において、急速な高度情報通信社会の進展への的確な対応が求められている。 この的確な対応の中には、情報の入手方法、読み解く能力の差異等の消費者の特性に応じた適切な対応や、消費者政策の実施に当たって、 情報通信を適切かつ効果的に活用することも含まれる。』

 更に、同計画は消費者意識や行動に関して、次のことを指摘しています。
『家計の消費支出構造の長期的な変化を見ると、商品への支出からサービスへの支出へシフトしてきており、サービスへの支出が全体の4割を超えている。 大量生産・大量消費の時代における商品を所有することで豊かさを実感する考え方から、サービスを受けることを重視し、 場合によっては商品を第三者と共有(シェア)し、必要な時に必要なだけ利用すればよいという考え方への変化が広がりつつある。 このような消費者行動・考え方の変化は、消費者を取り巻く環境の様々な変化やライフスタイルの多様化を反映したものと考えられる。 サービスについては、内容が価格に見合っているかどうか、質の評価が難しいという特性があることから、サービスに関する消費者トラブルの防止・ 救済に向けて十分に配慮するとともに、共有(シェア)など多様な消費行動に柔軟に対応することが求められている。
また、消費者の意識については、環境や被災地の復興、開発途上国の労働者の生活改善等の社会的課題に配慮した商品・サービスを選択して消費する ことへの関心が高まっており、これは「持続可能な消費」や「倫理的消費(エシカル消費)」と呼ばれることがある。 このような環境等に配慮した商品・サービスの選択を可能とする環境の整備や食品やエネルギーのロスの削減などの社会的課題に配慮した消費を促進する ことが求められている。』

 上記の同計画は、第4章の5年間で取組むべき施策の内容で、「消費者の安全の確保」を一番に挙げています。 インターネットという便利な情報共有の手段が普及している現在ですが、メーカー側と消費者側の双方ともに製品やサービスに関する情報の共有を、 更に開かれた環境として形成していく必要があるように思われます。